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「リラックス」を可視化して商品の信頼を高める

2022年10月12日

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シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第186回

10月10日発行のシルバー産業新聞に、村田特任教授連載の第186回「半歩先の団塊・シニアビジネス」が掲載されています。「施術によってきちんとリラックスできると、認知機能の一種である「集中力」も向上する」と書かれています。では、リラックス状態を可視化し、科学的エビデンスを取得するには、どうしたらいいのでしょうか。(以下抜粋)

 


その商品・サービスで本当にリラックスできている?

長引くコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻と円安による物価高で先行き不安感が増大し、精神的なストレスを感じる人が増えているようだ。こうした状況のせいか、「リラックスできる」ことを効能としてうたう商品・サービスが増えている。「リラクゼーションマッサージ」「リラクゼーション音楽」「リラクゼーションドリンク」など枚挙にいとまがない。だが、こうした商品・サービスで利用者が本当にリラックスできるのか、科学的に検証されていないものが多いようだ。

 

リラックスできているかは自律神経の状態でわかる

私たちがリラックスできているかどうかは、実は生体情報の収集と解析で評価できる。

一つ目の方法は「自律神経」の状態を心電図による「心拍変動」から評価する方法だ。自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、ストレス状態では交感神経が優位となり、リラックス状態では副交感神経が優位となる。心拍変動とは心電図で見られる心拍間隔の周期的な変動をいう。これには呼吸変動に対応する高周波変動(HF)と、血圧変動に対応する低周波変動(LF)が含まれる。リラックス状態、つまり副交感神経が優位なときには、HF成分とLF成分が現れる。一方、ストレス状態にある場合、つまり交感神経が優位なときには、LF成分が現れるものの、HF成分が減少する。従って、LF/HFの値はリラックス状態で小さくなり、ストレス状態で大きくなる。このLF/HFの値をストレス指標として評価する。

 

脳活動の状態でもリラックスできているかわかる

二つ目の方法は、安静時の脳活動の左右差からストレス状態を評価する手法だ。脳活動計測にはNIRS(近赤外光計測装置)という装置を使う。計測の結果、脳の右側の反応が高いと眠気や疲労が大きい状態で、逆に脳の左側の反応が高いと眠気や疲労が小さい状態であることが知られている。この原理を利用した「安静時左右差指標」(LIR:Laterality Index at Rest)によって、リラックスできているかどうかを評価できる。

 

美容室の施術でどれだけリラックスできるか?

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写真は私が役員を務める東北大学ナレッジキャスト㈱と東北大学と日立ハイテクらによるハイテクベンチャー、㈱NeUとで美容室のヘッドキュア施術でどれだけリラックスできるか実際に検証した時の風景だ。ヘッドキュアとは美容室向け化粧品の販売を行うイーラル㈱が開発したオイルマッサージとシャンプーによる独自の施術だ。施術を受けている利用者のストレス指標(LF/HF)が徐々に低下し、リラックスしていく傾向が統計的有意に見られる(右図)。

 

きちんとリラックスできると認知機能も向上する

本検証では施術の前後で認知機能検査も行った。興味深いのは施術によってきちんとリラックスできると、認知機能の一種である「集中力」も向上することだ。ヘッドスパ施術を提供する美容室は数多くあるが、施術による健康増進効果を科学的に検証した例はこれまでほとんどなかった。リラックス状態を可視化する技術により、科学的エビデンスを取得して効果の信憑性を高めることで、顧客からの高い信頼を得られるだろう。(以上抜粋)


 

産学連携が企業・大学に大きな利益を生み出した先駆例

本研究についての脳科学計測手法や計測結果の評価・解釈は、「脳トレ(脳力トレーニング)」開発者である東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授から学術指導によるものです。「脳トレ」については、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズの共同研究が企業・大学に大きな利益を生み出した先駆例として、「企業との共同研究→商品化→収益化→収益を大学に還元→研究環境の整備→さらなる研究推進」という好循環のひな形となっています。

昨今、大学の研究成果を基に企業と共同で商品化しそれが社会に受け入れられる、いわゆる「社会実装」が日本の大学に求められていますが、今回の効果検証実験でも確かな効果が裏付けされ、ヘッドキュア導入の活性化において、その役割を果たしているものと言えます。

東北大学との共同研究による脳トレ開発ストーリーはこちら

 

カレッジは生命科学分野の最先端知見を得られる場

東北大学の健康寿命延伸・スマート・エイジング分野の精鋭教授陣が、企業の経営者・実務担当者からなる受講生に対して、最先端の研究シーズ情報を提供し、企業の健康寿命延伸・スマート・エイジング・ビジネスを多様な角度から支援するSAカレッジ。過去8年間にのべ406社が参加、企業規模は大企業から中小企業、ベンチャー企業まで幅広く参加されています。

この度、東北大学SAカレッジ22年度に大変好評を得た選りすぐりの講座を特別価格で10月~12月に配信することになりました。社内のスキルアップに、より受講しやすく、オンデマンド受講でお好きな時間に何度でもご覧いただくことができます。

 

コースA:脳科学の観点から認知症を理解し、予防につなげる

 

コースB:スマートエイジングの考え方から消費行動を理解し、ビジネスに応用する

 

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