どのような事例か?
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、川島隆太教授が監修し、続編と合わせて世界で3,300万本以上売れた大ヒット商品です。米国では「Brain Age」、欧州では「Dr. Kawashima’s Brain Training」という名称で販売されました。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が脳の処理速度を向上するトレーニングが主であるのに対し、「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」は脳の作動記憶(ワーキングメモリー)の拡大を図るトレーニングが主になっています。
両者の主なメニューを取り入れ、SWITCHをプラットフォームにしたのが「脳を鍛える大人のSWITCHトレーニング」です。
注目すべき点は?
1.「脳トレ」ブームを世界中に巻き起こし、脳を鍛えることの重要性を世の中に知らしめた点
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は口コミやテレビの報道などで徐々に注目を集め、発売半年後には100万本を突破。敬老の日に祖父母へ本体とソフトをプレゼントする、というユーザーも登場しました。
空前の脳トレブームを巻き起こし、社会現象になりました。2006年の新語・流行語大賞で「脳トレ」がトップテンを受賞していることからも、当時のブームが伺い知れます。ブームは日本だけでなく世界中で起こり、売り上げの3分の2が海外とも言われています。
2. 脳トレアプリによる認知機能改善効果の科学的エビデンスを検証し、論文化している点
あまりの大ヒットのためか、科学雑誌『Nature Neuroscience』など主要海外メディアから「効果がない」などとの批判を受けたこともありました。しかし、川島教授らのグループが2012年に『PLoS ONE』に発表した論文で、4週間に渡ってこのソフトを実施した高齢者では、対照群 (『テトリス』を実施したグループ) と比較して多くの認知機能検査の得点の向上が見られることが示されています。
『PLoS ONE』の論文
『Nature Neuroscience』の批判記事の執筆者が実際に仙台まで来て、上記データと共に川島教授の説明を聴き、後日「自分の記事は誤りだった」と謝罪文を掲載しています。健康関連商品においては、医薬以外でも医薬並みの科学的エビデンスを取得することの重要性を認識させられた事例です。
産学共同で研究したメリットは?
産学連携による商品化が企業、大学の双方に大きな利益を生み出した点
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズの共同研究は、企業との共同研究→商品化→収益化→収益の一部を大学に還元→研究環境の整備→さらなる研究推進という好循環のひな形となりました。今日、大学の研究成果を基に企業と共同で商品化し、それが社会に受け入れられる、いわゆる「社会実装」が日本の大学に求められていますが、本事例はその先駆的な役割を果たしたものと言えます。
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脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング 紹介映像