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2022年01月07日
東北大学大学院生命科学研究科、東北大学ナレッジキャスト株式会社、株式会社コシダカ、株式会社オーク製作所の4者共同で開発した「除菌・ウイルス不活化機器」の事例。
今回開発した除菌・ウイルス不活化機器は、高効率・高耐久性設計で小型・軽量で扱いやすいため、カラオケルームのみならず、飲食店(レストラン、居酒屋等)、ホテル、高齢者施設、公民館などの公共施設での新型コロナウイルス感染リスク低減策の機器としても期待されます。
紫外線UV-Cによる新型コロナウイルス不活化効果に関する情報は十分ではありませんが、実験室レベルでは新型コロナウイルスの99.9%の不活化に必要な紫外線線量は、大腸菌やバクテリオファージウイルスを99%死滅させるのに必要な線量よりも少ない3分の1程度であることが報告されています。このため大腸菌やバクテリオファージウイルスを99%死滅させる紫外線線量を指標に紫外線UV-Cを照射することで、新型コロナウイルスを99.9%以上不活化できることが期待できます。
東北大学大学院生命科学研究科の協力により、254nmの紫外線UV-Cランプを用いて、大腸菌およびバクテリオファージウイルスを99%死滅または不活化させる照射線量が、大腸菌では6.5 mJ/cm2(ミリジュール/平方センチメートル)、バクテリオファージウイルスでは12 mJ/cm2であることを同定しました。これに基づき、12 mJ/cm2を照射基準線量値とし、広範囲に均一に、かつ短時間で照射基準線量を照射できる「特殊紫外線ランプ」を設計、開発しました。
株式会社コシダカが運営するカラオケまねきねこでは、感染予防対策の基本として入店時の検温・体調確認を徹底しています。そのうえでカラオケルーム内でのウイルスの3つの感染経路「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」に対して次の感染予防対策を講じています。
(1)接触感染予防:ルーム内のマイクやドアノブなどのアルコール消毒の徹底
(2)飛沫感染予防:顧客・従業員の不織布マスク着用、マイクマスクの装着、ルーム収容サイズに応じた人数制限
(3)空気感染予防:厚生労働省が定めた換気水準を満たした換気容量の設定
今回開発した機器の主目的は、顧客のカラオケルーム利用後にUV-Cを基準線量照射してルーム内の除菌・ウイルス不活化を行うことで、清掃スタッフと次の顧客への空気感染を防ぎ、クラスター発生の連鎖を断ち切ることです。
そこで、実際にコシダカのカラオケ店舗(S、M、Lルーム)をモデルルームとして、大腸菌を塗布した大腸菌死滅線量評価プレートをモデルルーム内の壁、床、天井、ルーム中央部等に設置し、開発した特殊紫外線ランプを、ランプから最も離れた地点で同定した照射基準線量値12 mJ/cm2の紫外線を照射し(照射時間7~15分:部屋の大きさによって異なります)、大腸菌の生存率を測定しました。そして、モデルルーム内で人が移動、触れる可能性の高い位置、地点で大腸菌が99%以上死滅する設置・照射条件を決定しました。
本研究で開発した「特殊紫外線ランプ」を用いた除菌・ウイルス不活化機器をカラオケルーム内で照射することで、紫外線の強い不活化力により、ルーム内の新型コロナウイルスの感染リスクを低減することが期待されます。
種々の紫外線照射によるウイルスや菌に対する科学的評価は東北大学が、用途に必要な機器の設計・製作はオーク製作所が、実際に使用するフィールドの提供と開発後の検証をコシダカが、必要な仕様決定のための条件提示とプロジェクトマネジメントを東北大学ナレジキャストが実施しました。それぞれの強みを活かした商品開発が可能となり、事業者であるコシダカはサービス(まねきねこ)利用者にその期待効果について説得力ある説明ができます。