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SAカレッジ22年度 コースⅡ 第12回月例会 質疑セッションがありました

2023年03月27日

薮上 信 教授 「磁気工学と高周波技術のヘルスケアサービスへの応用」

 

SNS230327-s2023年3月22日、SAカレッジコースⅠ第12回月例会 質疑セッションが開催されました。
講師は、薮上 信 教授。講義テーマは 「磁気工学と高周波技術のヘルスケアサービスへの応用」でした。
質疑セッションの前に、講義内容のアップデート情報についてお話してくださいました。

 

アップデート情報

アップデートをまとめさせていただきました。資料については若干加筆させていただいております。
自己紹介も兼ねまして、私の主な研究テーマについてざっとお話しさせていただきます。
今、ご紹介いただきましたように、磁気工学と計測工学をバックグラウンドにしています。5年前まで別の大学からこちらに異動になりまして、講座名としましては「生体電磁エネルギー医工学分野」ということもございますので、もともとの磁気工学・計測工学に加えて、今回お話しするような、例えば磁気の加熱・温熱治療などの新しいテーマも今、すすめているということでございます。
それからもともと持っている計測技術をバイオ・医工学系分野で、具体的には微生物だったりタンパク質だったり、というところの評価、あるいはそれを用いた、現場で使っていただくような実証試験というようなものを今、進めている最中でございます。

研究の元としましては、だんだん研究する時間が年を取ると作れなくなってきているというのが正直なところではございますが、それでもなるべく現場に自分で行って、手で動かして、学生さんと一緒に実験するということを、一番大事に、重要視しています。そういった中から次のテーマとか、アイデアが出てくるという経験が多いと考えてございます。

それでは、前回からのアップデートしたところについて、お話しさせていただきます。主に社会実装面のところとか、実用化のところについて、ある程度進捗があったかなと考えてございます。

まずこちら、「高周波電磁材料評価」というのは、私がもともと学生時代からやっていたテーマでございまして、磁性材料や誘電体材料などの高周波の物性定数評価をずっとやってまいりました。で、おかげさまでこういったプローブの実用化に成功しまして、これはマイクロストリップといいまして、高周波のシグナルを通すような仕掛けなんですけれども、これを使ってですね、3つの特長のある評価ができるということでございます。
例えば、大きなウエハのようなものを近くに持ってきても評価ができるというようなものです。
ポイントとしましては(U字状に)折り返した構造になっているものですから、上に大きなウエハなどがあっても、それを壊したりすることがなく、インラインで評価ができるということ。それから全体を連続帯域として67GHzの帯域をカバーしてまして、ここまで広帯域なのは世界でもないので、そういったところにアドバンテージがある。それから私ども磁性薄膜の評価なんかをずっとやってきていて、SL比の悪い材料評価にも使えるようなしかけがいろいろ施されているというような形になっております。これまで、こういった3つのポイントをアピールいたしまして、特許ですとか、国内外からたくさんのサンプル評価依頼を受け付けてやっております。

 

現在IECの世界規格をこの方向で30GHzまでの帯域で実施するというところの一つとして候補としてノミネートされていまして、ラウンドロビンを実施してございます。これは世界中のいろんな、この帯域の磁性材料・誘電材料の評価に使われる手法を全部まとめまして、それで複数のサンプルをお互い行いまして、それで世界的な規格を作っていこうという、そういった試みに加わっているということでございます。


Tohoku-TMIT株式会社について

また並行しまして、外部からの評価の引き合いというのもそれなりにあるものですから、大学だけでボランティアでやっているというよりは、ある程度会社のような形にして仕事が回るようにした方がいいなという風に思いましてスタートアップの設立を行いました。
1月4日で(今年になって)出来上がったばっかりということでございます。私はCTOという形で加わらさせていただいております。
仕事の内容といたしましては、先ほどの磁性材料や誘電体剤の評価装置の製造・販売というところなんですが、まだ作ったばっかりで、正直お金がそんなにある訳ではないので、外部からのサンプルの評価をさせていただいて、というようなところまで僕がやっているところでございます。
加えまして磁性材料というのは、一般の世の中の方から見ると、やっぱりとっつきにくいという話が多いものですから、磁性材料の評価に際して、デバイスとか材料の評価に対してコンサル的なことも受けているという形でございます。

さらにこの高周波の計測技術というのを私のコアにやっておりますので、これをバイオケミカル系の評価などに応用するということも進めてございます。
これはまだ基礎研究のレベルでございますが、磁性ナノ粒子、非常に小さな磁性体の粒なんですけど、これを凝集させることによって、通常は液体が分散した状態になっているのですが、これをギュッと集めてあげると、液相と言いまして、磁性材料の小さな粒の磁化率ですとか、損失ですとか、そういうのを凝集させてあげると個体と同じに制御できるというようなところに着目して、こういった基礎研究を今、やってございます。(後略)

 

質疑セッション後のひとこと

質疑セッション後の、先生より参加者の皆様へのひとことでは、

「貴重なコメントや質問をいただきましてありがとうございました。
私も普段はやっぱり研究所に閉じこもって、基礎研究をやる・実験をやるというのが楽しみでこの仕事をしているようなところもあるので、どうしてもそうするとお話しする人も学会とか、そういう磁気のことを知っている人同士でしかやり取りがないので、どうしても狭くなるなと考えていて、特に世の中のニーズがすごく大事で、それを勉強しながら自分の研究の方向性だったり、いろいろなプロジェクトの作文といったプランを作る等、そういったことが大事なので、実際専門の医療関係者の方とか歯医者さんとか比較的頻繁にインタビューさせていただいて、そこで得られたお話をつかわさせていただく、ということをやってございます。
今日もそれと同じで、自分の専門じゃない方、遠い方の声を聞かせていただき、非常に貴重なお話しだったので、これは私としても次に活かさせていただきたと思っております。今後とも私に何かお役に立つことがございましたら、お声がけいただくとありがたいと思います。どうもありあごうございました。」という趣旨のお言葉がありました。

 

本年度のコースⅡのすべての過程は、これで修了しました。

 

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