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SAカレッジ22年度 コースⅠ 第12回月例会 質疑セッションがありました

2023年03月23日

中川 敦寛 教授 「デザイン思考による医療関連ビジネス創出」

 

SNS230323-s2023年3月22日、SAカレッジコースⅠ第12回月例会 質疑セッションが開催されました。
講師は、中川 敦寛 教授。講義テーマは 「デザイン思考による医療関連ビジネス創出」でした。
質疑セッションの前に、講義内容のアップデート情報についてお話してくださいました。

 

アップデート情報

産学連携室を病院だけでもっているのは多分私たちがはじめてなんじゃないかと思います。全学のエクステンションがあるというところはありますが。

それはどうでもいい話で、(私の肩書の)名称見ていただくと「エクスペリエンスデザイン&アライアンスオフィス」という風に書いてあります。

要するに私たちのステークフォルダーというのは、患者とか紹介してくれる医療従事者とか、働いてくれる人・学んでくれる人、それから皆さんインダストリー。

それから健康な人とか、世界で一緒にパートナーシップを組む人たちまで、我々の6つの東北大学病院のパートナーというふうに考えまして、そういう人たちが東北大学と一緒にやるエクスペリエンスデザインをデザインするというところです。
あとはアライアンスを組まさせていただくということで、年間で私が今、担当しているのは、様々な契約があるのですけれども、100社くらいありまして、10%がグローバルを担当しております。

今日は10分間くらいでアップデート情報させていただいて、いろいろご質問いただければと思います。
特に今回申し上げたいのは、医療ビジネスというものがありますけれども、医療じゃない仕事が今、かなり増えてまして、例えば「Fujitsu Uvance」という富士通の時田社長がやられている、ICTを使って2030年に世の中をもっと持続可能でサスティナブルな、幸せな社会を日本が示して世界に広げていくという取り組みがあります。そのうちのヘルシーリビングというのを、我々主なところをデザインしておりますし、それからJR東日本の深澤社長が進めている、Beyond Stations構想という、駅に新しく価値を持たせる取り組みで、デザイン入っています。あとは寝具メーカーの西川さんで、寝具を作るところに新しい価値をもたせるとか、様々な価値のデザインをやっております。

今日は公文さんとかハウスさんとか関彰商事さんですね、(本日参加の)すべての会社で何やっているか、だいたい存じ上げておりますので、いろいろざっくばらんに今やっていることをご質問いただいて、われわれまさにやっていることとつながることがほとんどだと思いますので、なんでもいいのでご質問いただければと思います。

私たちみたいなところで、なんでこのアカデミアでこういうデザインやって、コンサルやるようなことにニーズが出てきたかというと、一言でいうとR&Dですね、開発研究の生産性が著しく落ちているからです。これは皆さんも何となく、うすうす感じていると思うんですけれども、1930年代と2000年代を比べると1/41に(生産性が)落ちたそうなんです。
で、これ、私も米国で戦略コンサルタントとかスポットでやっておりますけれども、やっぱり米国でもすごく早い人と遅い人の差がすごく激しいです。先日政府にちょっとお伺いしたときに、上の官僚の方から見せていただいたデータの一つが、意外と日本の企業は、GAFAMの5社を抜くとそんなに日本の成長率変わらないというデータを見せていただきまして。逆にそういうところつくれば、いいところ勝負できるんですけれども。逆に今、日本はトヨタですら(世界時価総額ランキング)TOP50から落ちようとしてますけれども、そのくらい世界中が加速しちゃってるんですね。全体としては1/41になぜかしら落ちてしまっている。で、勝者となかなか厳しいところで勝負しているところと、ものすごく差が出ているというのが実情だと思います。
我々のところに求められているものは、どうやったらそこのところにフワッと上がる形で、努力を少なくしてやるとこに、デザインとデジタライゼーションの両方必要だというのはあとでデータ出しますけれども、マッキンゼーとも仕事してますので、そういったところが今、基本的にはトレンドになってまして、デザインのところをやってくれ、デジタルとつながるデザインのところをやってくれというのが、われわれのところにくるデザインコンサルですね、そういった形になっております。


R&D、イノベーション 生産性をあげるためにとりくんできたこと

そういうデザインとデジタルですね。みなさんも働き方改革とかDXとかなかなかうまくいかないとよく聞くと思うんですけれども、なぜうまくいかないのか。

例えば、ハンコのデジタル化で機械で押すっていっても、微妙に時間は短くなるかもしれませんけれども、会社としてどういうプロフィッターでどういう顧客価値提案をして全体をデザインしてないと、ハンコ一個変えてもあんまり変わらないっていうのは、すぐ考えればわかる話なんですよね。
会社が向かうべき世界観というのから、ちゃんとゴールからバックキャストして、おとしていって、そこで最後ハンコが必要だったらかえるっていう話しで、そのテクノロジーにリプレイスメントするまでは、アナログでやっぱりデザインするっていうのは、これ明確に皆さんそうやっているのですが、それやらないで、ハンコからボトムアップからやってしまうからそれはうまくいかなくて、最後ベクトルがてんでバラバラになるというのが考えれば分かる話なんですね。


そういうところで如実に明確なデータが出ております。そういったところで一番大事な何を基軸にデザインするか、というとやっぱり顧客を定義づけて、その顧客が顧客ですら理解していないということを本質的に理解して、そのメカニズムを知るということです。メカニズムが分からないと、有能なエンジニアがソリューションを作りようがありません。ビジネスパーソン、ビジネスモデル、作れません。
ですから現場に入って徹底的に困りごとというものを可視化して、メカニズムを可視化して、それで一撃にエレガントに解決してグローバルスケーリングするようなお手伝いをしているというのが我々になります。で、そういうようなことができるところとできないところで、あっという間に100倍1000倍の差がついているのを、我々まざまざと見ております。そういったこともあって企業様いろいろ入っているのですけど、これはまあどうでもいい話で、現場観察をしていただいてそれを現場でテストしてやってます。やっぱりここでも、問題になるのは個人差、チーム差というのが如実で、60倍の差があります。現場観察してコースを作るまで50倍の差があります。企画力というのはそれくらい差があります。それで、やっぱり経営者の方からの依頼が、先ほど出した企業さんすべて、経営者さんからいただいているものになりますけれども、やってみてこの人たちにデザインやらせると非常にやっぱり100倍単位で違うっていうのを多分実感していただいているので、大型契約を多分頂いているんだと思うんですけれども。
ぜひ、東北大学には加齢医学研究所とか素晴らしいものもありますので、そういったものをベースにして、デザインのところはわれわれと、ご一緒させていただければと思います。結構こういう60倍という如実な差が出てます。これが2倍とか1倍とかにできれば、プラスの早い方の集団に行けるのかっていうのをいろいろ分析をしながら、それをマイナス60倍からプラス2倍とか3倍にどうやって行けるかっていうとこに必要なインフラ取得情報を、今いろいろ取り揃えているところです。
それからですね、こういったところの属人性や属チーム性というのは、全体を俯瞰する力、デザイン力というのがやっぱり不足してるかなっていうのがあって、これは仕方のない話なんですけれども。私は年間で、多い時は100回ちかくのセミナーをやってますけれども、お話しを聞いてみると、みなさんこういうところのマネージャーの方は、だいたいきいてみると、アイデンティファイにニーズを探索するところと、それから定義づけられたニーズに基づいてインベントするところと、ビジネスモデルでインプロベントするところと、どこが得意ですかときくと、やっぱりみなさんニーズのところはよく分からんと。ただ、定義づけられたものをインベントするのは得意だというのが、圧倒的に多いんですね。で、一番苦手なのはビジネスモデルのところです。これは年間100社やっててほとんどのところが一緒です。

それから課題探索の経験というもので、現場を捉えるのは重要だと分かっているんだけれども、そこのところ捉え方っていうのが実は4つあります。

それを例えば私、マッキンゼーと一緒に仕事やってますが、この4つというのを的確にやってます、そのレベルが1個1個高いから1件数億の案件になる訳なんですけれども、その4つというのはですね、現場観察・インタビュー・デスクトップリサーチ・サーベイ(アンケート)です。そういったものを適切に使い分けが全然なされてないです。やったことはあるんだけど、あるいは経験がすごく少なくて、数字を精緻化出来ないというとこですね。使い分けと精緻化のところの経験が、それを100倍速でやる人と一緒にやらないと、なかなかこういうところは質もスピードも上がりませんので、(P8の)2と3のところはニーズがあり、我々のサービスとして反映、アカデミアとして請け負うということですね。ビジネスをアカデミアに請け負うというのは今まででは考えられなかったことかもしれません。でも現実に100社の方々が我々のところでこうして仕事をやっているといのが今の事実です。


それから、4番になりますけれども、アンケートひとつやってみても、医療従事者から年間何件と来るんですけれども、見ると「これ何が聞きたいんですか?」「これはどういうアンケート結果がでるんですか」「これでどのようにジャッジメントするんですか」という話になって、それを5回くらい繰り返すと「こういうグラフを出したいんですね」というのが分かってくるわけです。で、そういうこと医療従事者にあって忙しいですから「たまらん」という話になるので、それを5回を1回にするお手伝いをしてるんですね。だいたい皆さん5回でたどり着く、こういうようなグラフが出てきて、こういうグラフがほしかった、こういうふうにジャッジメントするんだ。これを1回で、10分でできたら素晴らしいと思いませんか?そういうようなこともデザインのうちのひとつです。それからあと、こういうところをマネージャーする人材がですね、どうしても自分の専門領域のところはくわしい、隣りくらいは知ってる、でもその二つ隣くらいのところはほとんど分からんというのが、ほとんどなんですね。で、こういうところは、GAFAMにどういう人材がいるかというとティーチ型人材です。こういうとこ、自分のとこ、デプスは非常に深いんですけれども、データサイエンス・マーケティングとかテクノロジーアセッスメントやビジネスモデル、その辺のところが、よく分かっているような人たちがいろんな部署にいて、Googleでいったらプロジェクトマネージャーと言われているわけですね。こうした違いにおいて、やっぱり難しいです。スピードも上がらないし、クォリティもあげてスピードを上げるって難しいですね。


それから、合意形成に要した時間ということになりますけれども、自分はこういうニーズがあるというのを、ある程度確信を持った場合に、上司にどれくらい説明に時間を要しましたか、という時間になりますけれども、30分から1時間の人がほとんどなんですね。で、ちょっと自信がないと1か月くらいかかるというような人たちもいるわけなんです。でも、私たちはここでどのようなことを目標にしているかというと、パワーポイントなしで2-3分で「ああ、それいいね、サンキュ」でブチって電話切られるやつですね。そういうようなところを目指してます。要するにパワーポイントを労して1時間説明しなければいけないようなものは、カスタマーも買ってくれるわけがないんですね。ですから、そこまで研ぎ澄ます、クリスタライズって言いますけれども、そういったことをやっています。
そういうようなことを、総じてデザインと呼んでまして、病院は複雑な課題を包含しているところなので、それを現場観察して課題を明示化してメカニズムやってそこに必要なチームフォーメーション組んで一緒に解いていきましょう、それで年間100社くらいの方が来て、いろんな課題をとって、課題をやりながら商品化がどんどんできて、、、ちょっと時間がなくなっちゃたので、具体的な事例は飛ばしますけれども、最後にこのデータ(P12)をお示しします。これ、マッキンゼーのデータになります。マッキンゼーの上位顧客で1/4の業績に入っている、すごく業績がいいところです。その中でも
実はマッキンゼーデザインインデックスというデザインの、すごいねちっこいデザインインデックスなんです。要するにデザインシンキングがちゃんとできるということです。それとデジタライゼーションと両方で来ているところで、CAGR(年平均成長率)ペースで、年の成長率で数パーセントの差が出るというふうに一緒に仕事をしている連中からきいてます。要するにデジタライゼーションだけじゃ全然ダメなんです。デザインだけでもダメなんです。要するに経営者の世界観を解決可能な技術的課題に落とし込んで、必要なところにこの技術を当て込む形ですね。そういうような形にしていかないとダメなんです。でもそれができたときにGAFAMみたいなことがおきてるんだということになります。


そういう形で私たちもぜひ、そういったことをどんどんやっていきたいなと思っていますけれども。そういうデザインヘッドという人たちがこれから要るということですね。で、我々のところでは、こういったとこに勉強をしに国内外からすぐれたZ世代の人たちが来てやっております。こういう人たちがデザインヘッドの修行をしてプロジェクトに入っていただいている状態です。
ということで、VUCAといわれて久しいですけれども、視界不良の時代で状況がころころ変わる中で、今までの10倍速100倍速を求められる時代になったので、要するにデジタライゼーションのスキル・知識・スキーム、それからデザインのスキル・スキーム・知識、そんな時代になったんですよということが今日のメインメッセージになります。そういうことができるような病院に、東北大学病院はモデルチェンジしましたということで、アップデート終わらさせていただきます。

 

質疑セッション後のひとこと

質疑セッションでは、参加企業様からの質問に対して、先生から濃厚な回答をいただき、参加者の皆様から課題解決のヒントになったという声がたくさんありました。先生より参加者の皆様へのひとことでは、

「一生に一度しかないから面白いことやらないと損です。

世界の風を知り、バー下げたらいくらでもバーは下がっちゃいます。

バーを下げるとどういうことが起きるかというと、安いところでこき使われて苦しいところで働かなくてはいけません。

でもバーを上げて、ちょっと勘所をクリアすると笑いが止まらないようなビジネスができるということを、われわれ、地で経験してます。

日本をそういうところにもっていかないと。
最近、投資家のピーター・ティールが投資しているオサロ(Osaro)というロボットの会社があって、物流のところでの日本への優先順位を下げているんです。

畳み込みニューラルネットワークを使ってピッキングする技術を持っている素晴らしい会社です。

なぜ優先順位を下げているかというと、人件費安いからですよ。人件費が安いからリプレスメントができないから日本市場のカスタマーとしての優先順位を下げちゃっているんです。そうすると何が起きるかというと、他の国で作りこまれた、日本にアジャストしないものが日本に来ることになっちゃいます。
とにかく給料があげるような、価値の高いことをやり続けないと、我々本当にまずいな、というのは肌で感じてますので、ぜひ面白いものをやって、高いものをみんなに喜んで買ってもらう製品を作り続けて、それで正のスパイラルを回していく社会を僕たちで作って、下の世代にバトンタッチしていきたいと思っています。
そういうビジネスのことを、今一所懸命いろんな会社とやっていますし、実績出してますので、何かありましたらいつでも声かけてください。」という趣旨のお言葉がありました。

 

本年度のコースⅠのすべての過程は、これで修了しました。SAカレッジ22年度の修了式は3月24日に行われます。

 

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