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SAカレッジ22年度 コースⅢ 第12回月例会 質疑セッションがありました

2023年03月15日

齋藤 昌利 教授 「周産期医療のルネッサンスを目指して

 

SNS230315-s2023年3月14日、SAカレッジコースⅢ第12回月例会 質疑セッションが開催されました。
講師は、齋藤 昌利 教授。講義テーマは 「周産期医療のルネッサンスを目指して」でした。
質疑セッションの前に、講義内容の補足をお話してくださいました。

 

小さい赤ちゃんを救いたい

私が行いました講義の中で、人工子宮人口胎盤というものを使って、なるべく小さい赤ちゃんを救いたいというようなコンセプトで、今研究を行っているとお話しさせていただきました。
で、実際どれくらいまで来ているのかということなんですけれども、実は羊の赤ちゃんを使うとだいたい2週間くらい、生存することができます。
僕らのいいライバルなんですけれども、フィラデルフィアの方でやっている同じような研究では4週間生存させることができたという研究報告もされています。
羊の赤ちゃんを使うと、何週間という単位での生存が可能というところまで来ている、というところです。

実はですね、我々のコンセプトは、長く赤ちゃんを救いましょうと、長い期間生存させましょうというものではなくて、より小さい赤ちゃんを生存させたいというコンセプトでして、そういった意味から2週間くらいでも大分意味があるのかなと考えています。
23週24週という非常に早いタイミングの赤ちゃんにとっては、1日、2日、3日というのは非常に大きな意味をもちますので。
そういうような日にちを何とか稼ぎたいというのが、今現状としてあるところです。

実は、今月末に日本ではないが、シンガポールに行って霊長類を使って同じような実験をすることが決まっています。

これは成功するかしないかは、なかなかわかりませんですけれども、霊長類でできれば、世界初としてひとつ、ご報告できるかなとというふうに考えています。

 

いろいろな治療をやってみようという試み

もうひとつ最新の情報としては、そういう人工胎盤や人工子宮の中で、プラスアルファでいろいろな治療をやってみようという試みをしています。
本日写真や動画をお見せできればよかったのですが、まだ論文発表前なので、シークレットというわけではないのですが、少し隠させて頂きますけれども、実は人工子宮・人工胎盤の上で赤ちゃんのお腹の手術をして、その手術がし終わった後にもう一度人工胎盤・人工子宮に戻して、そこから数日間成育させるというような研究であったりとか、あるいは人工胎盤の回路から細いカテーテルを入れて赤ちゃんの心臓までそのカテーテルを届かせて、心臓の中でカテーテルのバルーンを膨らませて治療をしようというような試みも研究として行っています。
最初の人工子宮・人工胎盤の上での手術に関しては、5頭ずつ、コントロールと合わせて5頭ずつ研究が終了していて、結構いい結果がでてきています。
大学院生の学生さんにこちらの方を今、国際学会とか論文という形でそれを発表してもらうという形になります。


なかなか難しい考え方ですけれども、お腹の中で、いわゆる赤ちゃんの形態異常が見つかることがあります。
そういった場合、僕らの考えるコンセプトはなるべくお腹の中で赤ちゃんを大きくして、なるべく体重が大きくなったところで分娩して、そこから麻酔をかけて手術をするというコンセプトが今の流れなんですけども、どうしてもそうなってしまうと、体重を稼ぐ前に、その病気がどんどん進行してしまって、無事体重は大きくなったんだけれども、出てきたところでは、もう手が付けられないというようなことがあるんですよね。
赤ちゃんを救おうと思っているけれども、なかなか救えないというようなジレンマがある。であるならば、病気が進行するギリギリのところで、人工胎盤とかにつないでそのうえで手術をして治して、また新生児治療につなげていこうというようなところも考えているところです。(後略)


質疑セッション後のひとこと

先生より参加者の皆様へのひとことでは、

「医療で働くぼくにとっても、するどいというか、答えに窮するような質問がたくさんあって、非常に困ったわけですけれども、我々医療人とては病院で働いていると、どうしてもその病院の中の常識で動いてしまうところがあって、それは一般社会でいうと非常識になってしまいますので。そういう意味からいうと、このように企業の方々と接点を探す取り組みというのは、非常に我々にとっても刺激的で、新たな気付きのある取組みだなというふうに思います。
実は今いろいろ人工子宮とか人工胎盤の研究を行っていますけど、その中でも何個か研究が同時進行していますけれども、その中に今まで僕が「この企業と組む」をいうイメージが持てなかったところとのコラボというのも実はあるんですよね。
そういう意味からいうと直接的に結びつくものではないにしても、ベクトルが社会に向いて双方のコラボが社会に影響をおよぼすというようなそういうような活動もあるのかなという風に最近思ってきております。
つまり企業と組んで双方向にWin-Winというような、両方向にベクトルが向いているというよりも、それぞれの活動をコラボすることによって社会にベクトルが向いていくという活動もあるのかなと、最近非常に思うようになりましたので、ぜひとも「うちはあまり関係なさそうだね」と思わないで、いろいろなところからアプローチしていただければ幸いかなという風に考えております。」という趣旨のお言葉がありました。

 

本年度のコースⅢのすべての過程は、これで修了しました。SAカレッジ22年度の修了式は3月22日に行われます。

 

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