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SAカレッジ22年度 コースⅢ 第11回月例会 質疑セッションがありました

2023年02月27日

木村 敏明 教授 「感染症と死をめぐる習俗」

 

SNS230227-s2023年2月21日、SAカレッジコースⅢ第11回月例会 質疑セッションが開催されました。
講師は、木村 敏明 教授。講義テーマは 「感染症と死をめぐる習俗」でした。
質疑セッションの前に、講義内容の補足をお話してくださいました。

 

コロナ流行下での葬儀業の変化

コロナ下も3年続きまして、その中で死をめぐる習俗や葬儀などの状況も様々に変わってきて、新しい流れも見えつつあります。
そのことに関しまして、まず最初に私の方から少し追加の情報の共有をさせていただければと思います。
まず最初に、こちらでは主に2点くらいのお話しをさせていただきたいと思います。
一つ目は、葬儀業をめぐる状況です。皆様ももちろんご承知のことと思いますけれども、この葬儀業、業界全体にわたって、このコロナ禍で大変な試練の時を迎えていました。
三密を避けるといった観点から、たくさんの人が集まる葬儀というのは開きにくくなるわけですね。すごく簡単なやり方でのお葬式で、講義セッションでもお話しましたが、直葬といったような非常にシンプルな形式でのお葬式のやり方なんかも、大分拡大してきて、業界全体がかなり厳しい状況にありました。
それが、その後、このグラフは葬儀業の売上高と前年同月比の推移何ですけれども、ご覧の通り、2020年は特に厳しい状況に葬儀業が追い込まれていた。それが2021年ごろから徐々に回復傾向を見せ始めていまして、2022年には前年同月比でかなり回復傾向が続いてきている、というような状況を見ることができます。
これは一般社会、業界にいない私たちとかも実感としてお葬式なんかも普通な形で行うような例が見られ始めてきているということですね。
で、もう少し葬儀業界を大きなスパンで取り上げていきますと、2013年、東日本大震災直後くらいにこの業界が割と注目されて、いろいろな企業さんが算入することで一時的に盛り上がりを見せていた時期があるんですが、これは次のグラフを見るとはっきりわかるんですけれども、葬儀業に参加している規模別の売り上げの割合を示したものなんですけれども、2013年を見ると明らかに規模が大きな100人以上の事業者の枠がかなり大きくなってきていまして、東日本大震災あたりに結構大きな企業さんが参入してきて、この葬儀業に加わって、そのことなんかも、棒グラフの上のあたりの50-99人のところもかなり大きくなっていて、大企業さんがたくさん参入してくることで、一時的に大きく盛り上がりを見せていたのですが、それ以降その波も落ち着いていて2020年くらいまであまり大きな変化なくいったような形となります。
どちらかといえば均衡それからやや縮小気味だった中で起きたコロナ禍なんですが、そこからまた回復の傾向が見えてきているという状況が、最近見られるというのがひとつです。

 

樹木葬について

もう1点ですが、こちらのグラフの方は私から見ると興味深い変化でして、お墓の形などがコロナ禍を経て大きく変化を見せているということが鮮明に見えてきました。
この図はお墓の種類に関するアンケート調査の結果です。2018年のところを見ていただくと46.8%が一般墓、これは我々がイメージするお墓ですね。それが半分くらいを占めていて、それ以外に他の選択肢として、樹木葬とか納骨堂形式、その他という形で、半分くらいが一般墓であったわけですが、一般墓という形がわれわれの間でも減ってきていると話題になっていたんですけれども、ついに2020年に一般墓の割合を樹木葬が、かなりの割合で上回るという変化がおきています。この傾向は2021年により差がついてきて、2022年には41.5%になってきているんですが、それでもだいたい半分くらいの人が樹木葬っていうお墓のあり方を選ぶようになってきているという変化がみられます。
で、この樹木葬というお墓のスタイルが日本で広まるきっかけになったのが「樹木葬を知る本」の共著の一人であります千坂嵃峰さんという、岩手県一関のお寺の住職さんです。
元は祥雲寺というお寺で、今は樹木葬を取り扱う知勝院というお寺を作ってこちらの住職をされている方です。
ちなみにこの方東北大学の文学部の卒業生で、私は面識はないのですが、東北大出身の方です。
で、この方が岩手県一関市の祥雲寺というお寺で生まれて、お父さんが住職をされていたのですが、お父さんがお寺の周りの木なんかを開発して裏山を売っちゃったりして、そういうのを若いころから見ていて、それに反発を感じていて、そのころから自然保護活動とか里山の保全といったようなことに非常に関心を持って、そういう活動をされていた方です。1984年にお寺の住職に就任されるとそのあとも地域の北上川の自然を守る活動などもずっとされてきて、そういう中で得た新しいアイディアが樹木葬というやり方で葬るということを考え付いたんですね。
ご存じの方も多いとは思いますが、仙台市もそうですけれども新しくお墓を開発するときなんかは、割と人々が住んでいる住宅地からは遠い山なんかを大きく開発してそこを更地にしてお墓にする、いってみれば自然をかなり大きく手を加えてお墓を作ったりすることが多いわけですけれども、そういうやり方に疑問を抱かれて、里山保全とお墓を作るのをいっぺんにやるというのを考えられたんですね。
そのお墓のところに石の墓標を建てる代わりにその地域に生えている木を、それもちゃんと地域にふさわしい、よそから持ってきたなんでもいいのではないものを、墓標の代わりに建てて、名前を記すのは木で作られた名前の札のようなものを木の横に建てて、それだけだと分からなくなってしまいますから、この方が新しく編み出した方法として、周りに生えている木の種類というのを記憶するのとGPSを併用してどのあたりにどなたが埋葬されているのかというのを特定して管理するというシステムを考えられて、使用料を払うと33年間半径1メートルの円に関してその方が独占的にお墓として使用できるという仕組みを考えて、非常にこのことが有名になって、自然開発とお墓の共存ということが話題になって広まっていったものです。
(中略)


質疑セッション後のひとこと

先生より参加者の皆様へのひとことでは、

「本日はご参加いただいてありがとうございます。
死をめぐる問題というのは、できれば誰も考えたくない先送りしたい問題のひとつだと思います。しかし生にばかり目を向けていて死というのはある意味、生を続けることができない、敗北になってしまいます。しかしその一方で私たち誰しも最後は死ななければいけない、そういう運命にある、そこは変えることはできないわけなんですね。そうなってしまうと誰しもが最後は敗北で人生を終わることになってしまいます。そういった意味で死を含めた生というのを考えるというのが大事なんじゃないかと、これは個人にとっても社会にとっても大事なことだと思います。このお話が皆さん個人、それから企業の皆様に、この「死」について考えるきっかけとなれば大変うれしく思います。本日はどうもありがとうございました。」という趣旨のお言葉がありました。

 

次回、コースⅠ第12回月例会は、斎藤 昌利 教授による「周産期医療のルネッサンスをめざして」です。

 

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