コンテンツ

SAカレッジ22年度 コースⅠ 第11回月例会 質疑セッションがありました

2023年02月21日

鈴木 岩弓 名誉教授 「日本人の死生観 —過去・現在・未来—」

 

SNS230221-S12023年2月21日、SAカレッジコースⅠ第11回月例会 質疑セッションが開催されました。
講師は、鈴木 岩弓 名誉教授。講義テーマは 「日本人の死生観 —過去・現在・未来—」でした。
質疑セッションの前に、講義内容の補足をお話してくださいました。

 

死生観形成の基盤

皆さま講義動画はご覧になっていると思うので、発展形の授業を簡単にしたいと思います。
「死生観形成の基盤」と題しまして補足の授業としたいと思います。副題が「<いのちの始まり>と<いのちの終わり>」ということになります。

講義では「日本人の死生観 -過去・現在・未来-」ということで9つの項目でお話したかと思います。
そこでお話しましたように、死生観とは死や生についての考え方、生き方、要は人は死を見据えてどう生きるのか、というある意味では生きている人間、我々全員に関わる、そういう基本的な問題を考えてきたということですね。
そういうとき、それぞれ皆さんも私も含めていずれ死ぬわけなんですけれども、自己の死を見つめて生をどう生きるかというのを考える際には、基本的な考え方として「生とは何か、死とは何か」ということ。

つまり「<いのちの始まり><いのちの終わり>」ということが大事ではないか、ということで、授業のときには2番目と3番目(講義項目「2いのちの始まり」「3いのちの終わり」)のところでですね、こういう話をしました。
今日はこの辺を膨らまして、戦後日本の、特に法律の規制と医療の技術革新の点から<いのちの始まり>や<いのちの終わり>がどうなったのか、前回ふれた問題をもうちょっと資料も付け足してお話したいということでございます。

 

いのちの始まり

まず<いのちの始まり>からいきたいのですけれども、人の<いのちの始まり>はいつからか、考える時に、日本語にはいろいろな言葉があるわけなんですね。端から言うと、受精・着床・受胎・懐妊・妊娠、そして出産・分娩・娩出・出生、といろいろ似たような形でいのちの始まりを意味する用語があるのですけれども、ここ(出産の前)で大きく切れているんですよね。
その出産ということにより母体から赤ちゃんが出てくるということですね。母親の胎内で起こっている受精だとか着床というのは、普通の状態じゃ見えないわけですね。それに比べて生まれて出てくる、これは一般的にみればわかる話であるわけです。結局このうちのどこにいのちの始まりを見出すかということが問題になるということだと思います。
で、授業の時にやりました、実際法律からみた<いのちの始まり>でも、民法は体が全部出なければならないけれども、刑法では一部出ただけでもいのちが始まっている。だから母胎から出かかっている子どもを殺したら殺人になってしまうわけですね。
こうして法律や医学、宗教もいろいろな言い方で<いのちの始まり>を規定しているのですけれども、一言で言えば「諸説あってそれぞれの場面によって違うんだよ」という話になります。(後略)

 

その後、下記トピックスについてお話してくださいました。

  • 戦前戦後の出生数及び合計特殊出生率の年次推移
  • 法規制と医療技術の革新と丙午信仰
  • <いのちの始まり>の転換点
  • <いのちの終わり>について
  • 「死」の選択 心臓死or脳死
  • 現代日本の<いのちの終わり>
  • 戦後<いのち>の転換点

 

質疑セッション内で話題になったドラマについて

韓国MBC放送[特集VRヒューマンドキュメンタリー] 「君に会った 動画(YouTube) 

※動画は韓国語です。字幕の使用で英語や日本語でご覧いただけます。

 (画面歯車アイコン>字幕>英語字幕の選択か、自動翻訳→日本語選択で日本語の字幕)
NHK 土曜ドラマ「母、帰る~AIの遺言~

質疑セッション後のひとこと

先生より参加者の皆様へのひとことでは、

「私自身、やっていることは布教ではない宗教という問題で、皆さん方のお仕事に直結するような話ではないのですけれども。

人々の考え方の根底にある民間信仰というものに関心があるわけなんですけれども、その意味で、それを使って皆さん方が、起業するような何かいいアイデア出るかどうかというのは、はっきりいってあまりないんじゃないかと思います。
ただ私自身、こういうことを考えていただくことが、多分目先の何かを変えることにはならないけど、いろいろ考えていくときのひとつの資料になるんじゃないかを思うんです。
よく「氷山は10分の9は海面下にあるんだ」と言われます。

雑学でもなんでもいいんですね、いろんな情報をたくさん持っていれば、それだけ大きな氷山になるから、海の上に出た氷山の高さは高くなるわけですよね。
そういう意味で、こういう、もしかして宗教民俗学なんて関係ないなと思ってらしたかもしれないけど、こんなようなことも聞かれて、とりわけ今回扱ったのは、「生と死」という、人間にとって基本的な要素で、絶対に誰でも関わるものですから、こういうことを考えていただくことが、何かお仕事の方に結びつく、根っこの部分になっていればいいな、という風に思っております。何かのお役に立っていれば嬉しいと思います。
皆さんそれぞれがんばっていろいろなお仕事をなさってください。ありがとうございました。」という趣旨のお言葉がありました。

 

次回、コースⅠ第12回月例会は、中川 敦寛 教授による「デザイン思考による医療関連ビジネス創出」です。

 

SAカレッジに関する詳しい資料入手はこちら

SACプロジェクト共同研究等に関するお問い合わせはこちら