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SAカレッジ22年度 コースⅡ第5回月例会 質疑セッションがありました

2022年08月19日

吉澤 誠 特任教授「カメラによる健康センシング ~身体映像からの生体情報抽出~」

 

SNS2208192022年8月19日、SAカレッジコースⅡ第5回月例会 質疑セッションが開催されました。講師は、産学連携機構 イノベーション戦略推進センター 特任教授・名誉教授の吉澤誠先生。テーマは「カメラによる健康センシング ~身体映像からの生体情報抽出~」でした。

 

質疑セッションの前のミニ講義では、講義セッションの内容との差分を中心に以下の通りお話がありました。

 

ウエラブルセンサーと魔法の鏡の違い

ウエラブルセンサーが売れているが、充電し忘れたり風呂で外したりする、測れないこともあります。われわれが開発している「魔法の鏡」は、普通のウェブカメラからの映像で身体情報を抽出しましょうというもの。従来技術・競合技術について該当なく、時々刻々と変化する情報をそのままクラウドに上げれば、管理する手間も省けます。コロナ禍の状況で、様々な施設の入り口には体温を測る機会がおいてあります。これを利用して、血中酸素濃度を赤外光を使わず図ろうという試みをしています。また、われわれの様々な臓器を支配している自律神経指標を計算できるよう研究していたり、血行状態をモザイク状に表示することによって、自分の顔の表面の血行状態がオンラインでわかるようなこともやっています。

医療系の応用では、心電計を使わなくても映像を解析することによって、不整脈などがある程度判断でき、病院に行くきっかけができるということや、心療内科でいうと、ストレスや不定愁訴で悩んでいる人に、自律神経指標をある程度みることによって、病院へ行くべきかどうかというのを判断できるでしょう。

 

クラウドシステムを作った理由

このシステムを利用すると、各自がPCやスマホのデータをクラウドにアップロードすることで、世界中の人々の今の状況が地図上に表示することが可能です。こういうことをやることによって、地域ごとのストレス分布というのが、地政学的に分かったりする、ということが考えられます。これらのビックデータの集積を、皆さんが持っているスマホだけで出来る可能性があるわけです。そして、360度カメラの利用により、その周りにいる人々の映像脈波を同時計測し、健康情報が手に取るようにわかるということを考えています。

 

360度カメラを用いた「魔法の眼」

食卓やリビングなどにこの360度の魚眼カメラを置いておきます。カメラの回りにいる人たちの健康情報を記録したいのですが、映像が不安定だとなかなか正しく計測できません。例えば、食事時だと口を動かしていたり、笑っていたりして映像脈波が正確に取れません。でもテレビをじっと見ている時間が30秒くらいあれば、その時点の情報をためましょうという考え方で研究をすすめています。実際、計測してみるとリアルタイムで心拍数の推移や副交感神経の情報に関連するような要素が計算できるということが分かっています。カメラの回りにいる人の健康情報を蓄積するようなことが、6000円くらいのカメラとPCさえあればできるというとこになります。

 

球体型のディスプレイ「魔法の球」

魔法の球と称している、球体型のディスプレイに穴が開いたものは、この穴に掌をつけると正確に心拍数情報や掌紋認証もとれます。掌で穴をふさぐという行為をすれば、非接触性は失われるのですが、手の動きがなくなるので正確な計測できるのです。この球では、赤外線温度センサーがついてまして、非接触で体温も測れます。社会実装として考えているのは、現在事業所で複数台の車をもっているようなところですと、使用前点検で必ずアルコールチェックが義務化されている。なので、同時に健康診断や自律神経情報を取得しましょう、ということがやれるんじゃないかと事業化を進めています。

 

今後の計画

オンライン会議で熱心に参加しているかどうかが、映像から分かったり、また、労務管理や介護福祉施設での利用などを考えております。医療分野では、疾患性との関連性の追求で、不整脈のような心疾患に関して映像脈波は有効であります。

アミューズメント系の応用も考えており、アバターを使った「あつまれ どうぶつの森」ではカメラからの映像情報から、自分の精神状態や心理状態をアバターに埋め込むということができるかもしれません。実際、任天堂さんと共願している特許もあり、アメリカでの特許を取っています。

 

質疑セッション

質疑セッションでの皆様からの質問です。
「食品企業との産学連携事例があるか、またこんなものがおもしろそうだというものがあれば教えてください」
「カメラからの映像解析で血糖値も測れるのでしょうか」
「さりげないセンシングの時代は、どれくらいで実現できるのでしょうか」などの質問への佐藤先生の回答に、考えさせられました。
また、セッションの最後で、映像脈波を解像するツール・ビデオパルスの使い方の説明がありました。期間限定で利用できるこちらのシステムは、カメラがついているPCで利用することができます。

 

先生より参加者の皆様へのひとことでは

「これらの技術はコロナ感染症の拡大からはじまって、遠隔非接触で素晴らしいということになっているが、もっと精度をあげるために研究をすすめていきたい」という趣旨のお言葉がありました。

 

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次回、コースⅢ第6回月例会は、中谷友樹 教授による「COVID-19流行の時空間推移と人の動き」です。