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SAカレッジ22年度 コースⅢ 第3回月例会 質疑セッションを開催しました

2022年06月24日

免疫研究のスペシャリスト

 

ishii2022年6月21日、SAカレッジ22年度コースⅢ第3回月例会 講義&質疑セッションが開催されました。

講師は、大学院医学系研究科・医学部、医学部医学科長、免疫学分野、石井 直人 教授。

テーマは「新型コロナウイルス感染症対策に必要な免疫学」でした。

 

まずはミニ講義から開始です。

1.免疫とは
2.免疫異常(アレルギー、自己免疫疾患)
3.感染症と免疫記憶
4.ワクチン

 

1.免疫とは
 免疫は「自然免疫(生まれ持った免疫)」と「獲得免疫(自分で獲得する免疫)」であり、自分と自分ではないもの(異物)を識別して、自分ではないもの(異物)を排除する生体システムなのだそうです。

この「獲得免疫」の特徴として①特異性②記憶③免疫寛容があり、③免疫寛容が壊れるとアレルギーなどが発症するのだそうです。自分のものなのに異物と認識すると攻撃をしてしまう自己免疫疾患となるのだそうです。この③免疫寛容が壊れる前にワクチンなどで体に②記憶させることが重要なのだそうです。
花粉症なども花粉を寄生虫と同じように身体が反応しアレルギーとして発症するそうです。なぜ花粉に反応してしまうのか、治るのか、まだまだ研究が必要だそう。身体の中で花粉が寄生虫と判断されていることに驚きました。

 

2.免疫異常(アレルギー、自己免疫疾患)
 免疫異常とは免疫反応を起こしてはいけない物質に対して免疫反応が起こること。

  ①自己免疫疾患は本来、攻撃をしなくてもいい自己抗原に対して免疫反応が起こる(関節リウマチや脱毛症など)

  ②アレルギーは外からの外来抗原に対して免疫反応が起こる(花粉症や、食物アレルギーなど)

 原因や要因は想定されていますが現状では治せないのだそうです。

3.感染症と免疫記憶
 獲得免疫は①液性免疫(抗体による免疫)と②細胞性免疫(免疫細胞による免疫)。

 ②細胞性免疫(免疫細胞による免疫)はウィルス感染を防ぐ抗体で、細胞内には入れないため細胞内に入ってしまったウィルスをキラーT細胞やNK細胞、マクロファージなどが攻撃し、感染した細胞のみを除去する動きをするんだそう。
免疫記憶ができると、1度感染した同じウィルスが再度体内に侵入した場合でも免疫記憶が働き、症状が出現せず軽症で済む場合もあるとのこと。

 

4.ワクチン
ワクチンは感染と類似の免疫反応を誘導する薬です。大きく種類として2種類。
①生ワクチン(弱毒化した病原体そのもの)は、生の病原体なので効果は高いが副反応も相対的に高く、まれに本物の病原体に戻る例もある。
②不活化ワクチン(病原体の一部を精製あるいは合成したもの)は、生ワクチンよりも効果も副反応も低く、異物なので副反応はある。

コロナウィルスの場合、様々な株が発現していますが変異を繰り返し免疫から逃げているそうです。変異して逃げたウィルスが生き残って新しい株となる、いたちごっこのようになっているとのこと。現在の株は元の原型を保っていないくらい変異を繰り返しているんだそうです。やっかいですね。

 

ミニ講義の最後にまとめとして以下の4つを上げていただきました。
 ・免疫寛容の破綻がアレルギー・自己免疫疾患の原因
 ・免疫きおくは感染症予防の最大の武器
 ・ワクチンとは免疫記憶を利用した薬である
 ・免疫寛容・記憶を制御する方法の開発が必要

 

そして質疑では「子供もワクチン接種は3回打たないといけなのか」「ウィルスが自己免疫の引き金になっているような疫学的情報はありますか」「動物に触れあうとアレルギーを発症しないと聞いたが本当か」など、さまざまな質問に回答いただきました。

 

石井先生が第5代教授である東北大学大学院医学系研究科 免疫学分野はこちら

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次回、コースⅢ第4回月例会は、児玉 栄一  教授による「抗ウイルス剤の開発とその応用」です。